願望

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私が幼い頃、母を亡くした。 小さい頃だったのであまり記憶はないが。 父は私が高校生の頃亡くなったのだ…………。 ……………借金という置き土産を残していった。 その借金は殆どギャンブルとお酒、女に消えていった。 男の甲斐性である、飲む、打つ、買うをやり、終いには金と体が追い付かなくなり亡くなった。 その父が残した借金はそのまま私の借金となった。 父は祖父母に勘当され、私の母と結婚した。 それ故に、父が負担した借金は祖父母は知らん顔だった。 父の葬式の日、借金はどうなるという会議をした所、 親族は『我々は関係ない!』の一点張りで、結局私が支払いをして行く事となった。 私は高校を中退し、すぐさま職に就こうとしたが、世間の不景気故に職探しは困難を窮めた。 すぐ働ける場所…………。 それがキャバクラだった。 私は飲めないお酒を無理して飲み、 嫌なお客も何とかこなして行った。 たまに酒で潰れることもあったが、水商売しかやっていく所が無いので前向きに頑張って行ったのだ。 それでも一向に…………… 借金は消える事がなかった。 水商売を始めてしばらくしたある日……………。 ……………タイジが来たのだ。 初めは、明らかにホストだなぁと思って接客をしていた。 営業目的か…………。 そしてタイジは、何故か私を場内指名し他の女の子は席を外された。 ……………? 何だと言うのか………。 とりあえず接客を。 「指名してくれてありがとうございますぅ☆」 「いいえ………。」 タイジはにこりと微笑む。 「この店、私より可愛い子多いのに……… タイジさんって物好きだね!あはは♪」 実際、私はあまり指名を取れない。 最初から色恋営業(恋人の様に振る舞う営業)もしないし、体も触れてイチャイチャもしない。 だから意外だった。 タイジはお酒をちびりと飲み、悩ましげな顔をした。 「俺…………… 悩んでる人を放っておけなくて…………。」 私はこの時まだ水商売歴が浅かった。 なので、そんな事を言われ 何で解ったのかなぁ?と純粋な気持ちでいた。 (今思えば、悩みのない人間なんていないのに………。) 私は自分の境遇を振り返り、嫌な事を思い出したが極力無理のない笑顔をした。 「…………解っちゃった?」 (私の馬鹿!悩みなんて誰でもあるだろう!) タイジは微笑した。
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