願望

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「その可愛い顔に……書いてあるよ。」 これぞホスト! という口説き文句だと思った。 だからすぐに自分の事を話そうとは思わなかった。 「またまたぁ~! タイジさんお上手ですねぇ~!」 「無理して笑う子って…………色々なものを背負って生きてるんだよね………。 だからサクラちゃんが色々悩んでるのがすぐ解ったよ。」 タイジは私の目を見つめながら言った。 ……………………………。 図星だった。 親の借金を背負った私には、まさに無理をした笑顔だった。 それを理解してくれたんだ…………。 「………解っちゃうかぁ………。 よっ!さすがホスト!」 「………茶化すなよ。俺は真剣に話してるんだ……。」 「………………………ごめん…………。 …………実は。」 ……………………。 私はとうとう身の上の話を持ち出してしまった。 頼りもなく、支えもない私にとってタイジとの会話は安らぎがあった。 聞けばタイジはホストを16歳の頃からやっており、経験としてはずっと上だった。 それ故か……………………。 私はタイジを徐々に信頼していった。 私の身の上の話をすると、ただ『辛いね、酷いね』と頷くだけではなく、 水商売としてこうすれば客を掴める、 こうすれば客を長持ちさせられる、等のノウハウも教えてくれた。 それは、今よりもっと指名を貰って………… 今よりもっとお金を稼ぎ………… 今よりもっと借金の返済が楽になる様に教えてくれたのだ…………………… と思っていた。 タイジはグラスを傾ける。 「………お酒を飲む事じゃない。 相手を飲む事が仕事だよ。」 「そーかぁ………。 奥が深いんだねぇ………。」 私もグラスを傾ける。 「………ま、難しく考えないで気楽にやるのもいいから。」 タイジは優しく言う。 私は…………葛藤していた。 確かにお金を沢山稼げれば、借金の返済だって楽になる。 だけど…………………。 「………………色恋ってのは…………… ちょっとなぁ。」 さすがにそれは出来そうもなかった。 過去に、店の子で色恋専門の子がいた。 その子お客同士が 『他に男がいたのか!』と揉めて、最終的に客からその子が筆舌にし難い仕打ちを受けたのを聞いた事がある。 それも怖いが…………。 まず、良心の呵責が…………。 「彼氏でもいるの?」 タイジはニヤッと笑い言った。
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