願望

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「………いないけど…………。」 素直に言ってしまった…………。 タイジを見ると素の顔になっていた。 「…………まぁ、色恋って色々面倒くさいからね。 ……………それは俺も思う。」 やっぱり経験者は語る、だ。 タイジも過去に色々あったのかな。 ホストは特に、色恋以外のお客というのは中々いないだろうと思う。 目的はやはり、気に入っている男がいるのだからこそ行くのだろう。 それを思うと、ホストは中々にして大変な仕事だ。 そうこう考えていると、ボーイがこちらに近付いてきた。 「そろそろお時間ですが………。」 タイジは腕時計を見る。 ……………見るからに高そうな時計。 「………………ん…………。そろそろ帰るよ。 この後、犬の世話があるんだ。」 意外にも動物を飼っているのか。 (…………こういう会話にも抜かりが無い。) いい人……………かな………。 (どうして私ってこういうギャップに弱いんだろう……。) 「へぇ~!犬飼ってるんだ! 今度見せてぇ!」 タイジはいいよと言うと、懐から名刺を取り出した。 「………来ない連絡をずっと待ってるよ。ははは。」 そういうと、私に名刺を差し出した。 「するよ☆ ……あ!じゃあ私も名刺渡すね!」 私は名刺の入ってるポーチに手をやる。 「いいよ。 サクラちゃんの連絡したい時に連絡して。 ………………じゃあね。」 タイジは会計を済まし、足早に店の出口へ向かう。 (……………… 実に無駄の無い会話だと今になると思うが。) その余裕がタイジへの信頼を一層強めた。 私は慌てて、立ち上がり見送りに出る。 「…………あっ……… ありがとうございましたぁ!」 タイジはチラッと振り向き私に手を振ると、颯爽と店を出た。 ………………………………。 しばらくその場に立ち尽くしていた。 すると店で待機をしていた女の子のルイちゃんがこちらへ近付いてきた。 「ねぇねぇ!今の超イケメンじゃない!?」 私は別に顔を気にしてはいなかったが。 「んー…………そだねぇ。 何かいい人っぽかった。」 ルイちゃんは、いいなぁと残念そうな顔をしていた。 「………あれ、『ラブイズ』のナンバーワンだよ!」 いつの間にか、ハナちゃんという店の子がいた。 ハナちゃんは目をキラキラさせていた。 「ラブイズ?」 「知らないの!? この辺のホストナンバーワン店よ!」
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