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夜目が効くとは言うものの、やはり夜行性の動物と同じようには行かない。
見える範囲も、こう暗くてはかなり狭まってしまう。
螺旋状に伸びた蜘蛛の糸の隅に大きな黒い物体が鎮座している事に気付き、私は上にも視線を向けた。
吊り下げられた繭に掴まり、器用に新たな繭をぶら下げている黒い蜘蛛が見える。
番か……。
小さな蜘蛛の群れを視認していたはずの私は、ここに来てその可能性に直面した。
二匹の巨大な蜘蛛の死角に入り、目的の物を探さなければならない。
囮となる何かがなければ、簡単には行かないだろう。
考えながらも、私は蜘蛛の糸が伸びる洞穴まで辿り着いた。
かなり時間はかかってしまったが、更に下に潜り込むには糸をどうにかしなくてはならず、どうした物かと思案する。
蜘蛛は自分の移動用の粘りのない糸と、獲物を捕らえるための粘りの強い糸とを使い分けると言うが、どちらがどうなのか見た目では判別し難い。
目の前で動き回ってくれたならば、それは簡単に識別出来るのだろうが、この状況でそうなるのは、私が獲物として認識された時だろう。
その時だった。
野太い悲鳴が聞こえたのは。
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