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商人が発したと思われるそれに、下にいた巨大な蜘蛛が『キイイ!』と、甲高い音を発した。
思わず耳を塞げばそれに連動して、上にいたはずの蜘蛛が巣に落ちて来る。
睨み会うかのように二匹は相対し、鳴き声を上げた蜘蛛が降りて来た蜘蛛めがけて飛びかかった。
揺れる蜘蛛の糸は、まるで大きなトランポリンのようだが、ギシギシと響くその音はかなりうるさい。
襲いかかった蜘蛛は、前肢で相手の体を押さえ付けると、何の躊躇いもなく頭部に噛み付く。
「キイイィィ!」
甲高い悲鳴が鳴り響いた。
体を沈められた蜘蛛は、許しを乞うように小さく「キイキイ」と鳴いている。
そして、私は気付いた。
この蜘蛛達の大きさの違いに。
黒一色の蜘蛛を押さえ付ける更に大きな蜘蛛は、黒と灰色の縞模様で目は紅い。
体つきは似ている物の、大きさと言い色と言い、違う種類に見える。
大人と子供の違い、なのだろうか。
ぐちゃり。
呆然としている間に、巨大な蜘蛛は自分に従っていたはずの蜘蛛の頭を咀嚼し始めていた。
ぴくぴくと体を痙攣させながらも、蜘蛛は憐れな声を上げている。
しゃくしゃくと音を立てて噛み砕き、巨大な蜘蛛は一心不乱に蜘蛛を味わっていた。
蜘蛛の鳴き声は小さくなり、頭部がなくなって行くにつれて聞こえなくなって行く。
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