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見た目は人間的な姿をした人外のそれは、かなり醜悪だ。
灰色の体にある頭部は、目だけが半分を占め、手足は人間的であるのに尻部分は大きく膨らんでいる。
そして何より特徴的なのは、胴体から突き出した脚だろう。
「醜い……」
人間的な体に蜘蛛の脚。尻部分は蜘蛛の尾だ。
私の率直な感想と同時に、蜘蛛はかっと口を開く。
そこから伸びた糸は、私の両手に絡み付いた。
「……」
何も言わずに人外の蜘蛛を見詰めれば、それは勝利を確信しているのかニヤリと笑う。
「食ってやるぞ」
「……」
この人外の生物には、食欲しかないようだ。
「人を食って、人に近付いたのか?」
静かに問いかければ、それはけたけたと笑った。
どちらにしろ、醜い事に変わりはない。
糸に引き摺られながら、私はしっかりとナイフを握り締める。
怖がる様子のない私に焦れたのか、それは一気に糸を引き寄せた。
糸に捕らえられた私の両手をぶよぶよとした手が掴み、血の匂いのする口が間近に迫る。
節ばんだ蜘蛛の脚に腰を押されて、私は呆気なく地面に押し倒された。
「?」
蜘蛛の脚が服を撫でると、服はあっさりと布切れと化し、別の脚が布切れと化した服を剥ぎ取って行く。
晒された肌を、ベロリと人外の蜘蛛が舐めた。
訂正。どうやら貞操の危機でもあるらしい。
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