蜘蛛

13/16
前へ
/38ページ
次へ
見た目は人間的な姿をした人外のそれは、かなり醜悪だ。 灰色の体にある頭部は、目だけが半分を占め、手足は人間的であるのに尻部分は大きく膨らんでいる。 そして何より特徴的なのは、胴体から突き出した脚だろう。 「醜い……」 人間的な体に蜘蛛の脚。尻部分は蜘蛛の尾だ。 私の率直な感想と同時に、蜘蛛はかっと口を開く。 そこから伸びた糸は、私の両手に絡み付いた。 「……」 何も言わずに人外の蜘蛛を見詰めれば、それは勝利を確信しているのかニヤリと笑う。 「食ってやるぞ」 「……」 この人外の生物には、食欲しかないようだ。 「人を食って、人に近付いたのか?」 静かに問いかければ、それはけたけたと笑った。 どちらにしろ、醜い事に変わりはない。 糸に引き摺られながら、私はしっかりとナイフを握り締める。 怖がる様子のない私に焦れたのか、それは一気に糸を引き寄せた。 糸に捕らえられた私の両手をぶよぶよとした手が掴み、血の匂いのする口が間近に迫る。 節ばんだ蜘蛛の脚に腰を押されて、私は呆気なく地面に押し倒された。 「?」 蜘蛛の脚が服を撫でると、服はあっさりと布切れと化し、別の脚が布切れと化した服を剥ぎ取って行く。 晒された肌を、ベロリと人外の蜘蛛が舐めた。 訂正。どうやら貞操の危機でもあるらしい。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加