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旅の途中で雨に降られて、私は従者と洞窟に避難した。
この辺りは岩窟地帯で岩ばかりしかない。
それでも洞穴が多いので、雨風は凌げる。
そもそも動物を目にする機会は皆無で、草花は生えている物の、その他の生物は全く見かけていなかった。
「困りましたね」
従者が小さく呟く。
「……」
その声に視線だけを向けると、従者は肩をすくめて見せた。
全く緊張感の欠片もない。
ついでに、自分が従者であると言う自覚も乏しい奴である。
「町の連中が言ってた事は覚えてますか?」
問われて、私は眉根を寄せた。
忘れてはいない。
「命が惜しければ迂回しろ、だったな」
端的に要点だけをかいつまんで答えれば、従者は呆れたような顔をした。
「分かってたのに来たんですか?」
非難するような従者の声としかめられた顔を見ながら、私は小さく舌を打つ。
確かに多少は無謀だったかも知れない。
だが、ここにいるのは私達だけではなかった。
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