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馬鹿なのはわたし。愚かなのはわたし。
嬉しかっただなんて。
そんなこと。
こんなに感情をむき出しにするなんて、わたしらしくもない。
柄にもなく叫んだ喉が、少しだけ痛い。
うそなんて嫌い。
言葉はすべてニセモノ、つまりうそだから、わたしは人間が嫌い。
拒絶はわたしを守ってくれる。傷つくことからも、裏切られることからも、人間からも。
だからすべて拒絶してきた。
それがわたしの生き方だった。それが、わたしそのものだった。
わたしを否定した人間は、全て排除してきた。そのために、力をつけた。急所を狙い、一発で戦闘不能にさせる、すこしずるいやり方。
わたしの体は筋肉のつきにくい体だったから、それを補うため。多少のずるはしょうがない。
そしてさらに武器を持った。忍ばせられる、カッター。怪しまれることの少ない文房具を、服のいたるところに忍ばせている。
拒絶。排除。わたしはひとりがよかった。ひとりでよかった。ひとりが心地よかった。ひとりでいることがわたしの願いだった。
静かで、平穏で、無機質な、なにもない。頭が狂いそうなほど静かな、そんな世界と眠りを望んだ。
「すずめちゃん!」
不意に、腕を後ろから強く引かれた。不意打ち。体がぐらつく。体重を支えきれずに、後ろに倒れてしまう。
受け止められた。雨宮さんだった。
「なに……」
目を見開く。目の前は信号。赤い。
車が行き交っていた。
「大丈夫……? 顔色よくないし、汗、すごいけど」
わたしの顔を覗き込む顔は、焦燥が滲んでいる。雨宮さんの腕はわたしを受け止めるように優しく肩にまわされている。
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