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「和解なんてしてないわよ」
「つれねーこというなよ」
「帰るわ。金輪際わたしを見かけても話しかけないで。次は、切るわよ」
男が息を飲んだのがわかった。
そう、そうやって圧倒されていればいいのよ。黙って、怯えて、わたしを遠ざければいい。
息を飲んだのを確認して、わたしは踵を返してその場を離れた。
妙な男と出会ってしまった。この道はもう通らないようにしなければいけないわ。
それにしても。
雨宮さんとは正反対だわ。
あの男が心臓が悪いというのは本当なのかもしれない。
現実で恐ろしいほどに浮き彫りな、現実的な感情。そう、恐ろしかった。わたしはあの男がおそろしかったのだ。
わたしは来た道を引き返した。
あの屋上に、どうかいてほしい。
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