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わたしを待ち伏せするやつがいたとしたら、それは来栖尊に他ならない。
けれどそれなりに周知のことなのではないかと思うけれど、わたしに話しかけてくる愚か者はいない。
かつてはいたけれど、それらをみんな痛めつけるなり、脅すなりして遠ざけていたら自ずと話しかけてくるものはいなくなってくれたわ。
それをわかっているから、来栖尊は「すずめちゃんいるー?」とやたらに声をかけまくったりしない。声をかけたらわたしの友達なのではないかと危惧されて誰も答えてくれなくなったから。
まあ、わたしとしても来栖尊は友達ではないし、むしろもっと殺伐とした、敵のような関係なので、好都合だし心理衛生面上も清潔。
けれどその日は違った。
女子2人組が、あきらかにわたしを見てなにやらさわいでいる。さわいでいるというか、もめている。
「えー、あんたがいってよぉ」
「やだよ!」
はじめは無視していたが、あまりにもそれが長く続くのでさすがのわたしも不快になる。
じろりと女子二人を睨むと視線があった。
ひえっと声をあげられ、ああ忌々しい。
「なにかしら」
「あっ、えっと、校門前で篠原さんのこと、ま、待ってる人がいて」
あの女。
電話をかけてきただけでは飽き足らず、しびれを切らして押しかけてきたのね。
もちろんわたしが来栖尊の電話に折り返すような真似はしない。あの女の用事など、あの女の一方的なものであってわたしには関係がないから。
「それがなに?」
「い、いや、呼んでこいって、言われて……」
教室内の視線が向いている。みな女子二人に同情しているのだということは明白だ。
わたしはため息をこぼして、「そう」とだけ返した。
もちろん、急ぐ必要もない。わたしは出してから帰るように、といわれた進路希望調査に再び向かった。
すぐに動き出さなかったわたしに女子ふたりは困ったような顔をしたけれど、伝えたことは伝えた、とでもいいたげに足早に教室を出て行った。
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