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わたしはとりわけ急ぐでもなく、普通通りに進路希望調査表を書き、提出し、靴を履き替えて校門を出た。
校門でわたしを呼んでいるという愚か者を探すことはしない。
できれば関わりたくないし、裏門から出るという手もあったけれどあの女のためにわざわざ遠回りするのもばからしかった。
いつもなら「すずめちゃーん!」と猪突猛進してくるくせに、その日は校門を抜け切っても声をかけてこなかった。
ああよかった、とすら思っていたら、
「えー、超怪しい!」
「怪しくないって。絶対楽しいよ?」
「あはは、おにいさん、生活指導の木下が来る前にいなくなったほうがいいってぇ」
「え、おれ、高校生にみえないかな?」
「見えないってぇ」
キャハハ、と甲高い声でなにやらナンパが繰り広げられており、しかもその男はあの背の高いアッシュの髪をした不良だった。
まさか、と思って静かに辺りを見る。来栖尊のすがたはない。
「ちょっとちょっと!!出てくるの遅くね?」
わたしに気づいた男はナンパしていた女たちを放り、わたしのほうに近づいてきた。
え、あれ篠原じゃん。やばくね?
とナンパされていた女子たちが怪訝な顔をする。
わたしは話しかけてきた男を無視した。
「いやいや、きみだって!ほら、えーと、すずめちゃん!!」
なぜわたしの名前を。
「どちら様ですか」
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