タイムマシンの成果

3/14
前へ
/41ページ
次へ
感電すること十二回、制御を失い研究室の中を暴れ回ること八回、一度などエンジンから火を吹いて爆発した。 あの時は、本気で死ぬかと思った。軽いヤケドで済んだのが、奇跡である。 まさに苦難の連続。 そんなある日、というか今日、ついにタイムマシンが完成したのだ。 最後のネジを絞め終えたあと、机上の設計図に目を落とし「今度こそ本当に完成した」と、博士が断言したのである。 「さあ、里中くん」博士はおれの名前を呼んだ。 「記念すべき時間旅行者の第一号はきみにゆずろう。運転してくれたまえ」 「わたしには、まだ未来があります」おれは、かなり丁寧な口調を心がけて言った。 「おお、そうか未来に行きたいのか」博士は片腕をタイムマシンの方へ広げた。 「好きなだけ、行ってくれたまえ」 「まだ、やり残したことがあります」おれは博士に顔を向ける。 「タイムマシンは完成したぞ」博士は白い顎ヒゲをなぜながら、いぶかし気な表情。 「なんじゃ、やり残したこととは」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加