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感電すること十二回、制御を失い研究室の中を暴れ回ること八回、一度などエンジンから火を吹いて爆発した。
あの時は、本気で死ぬかと思った。軽いヤケドで済んだのが、奇跡である。
まさに苦難の連続。
そんなある日、というか今日、ついにタイムマシンが完成したのだ。
最後のネジを絞め終えたあと、机上の設計図に目を落とし「今度こそ本当に完成した」と、博士が断言したのである。
「さあ、里中くん」博士はおれの名前を呼んだ。
「記念すべき時間旅行者の第一号はきみにゆずろう。運転してくれたまえ」
「わたしには、まだ未来があります」おれは、かなり丁寧な口調を心がけて言った。
「おお、そうか未来に行きたいのか」博士は片腕をタイムマシンの方へ広げた。
「好きなだけ、行ってくれたまえ」
「まだ、やり残したことがあります」おれは博士に顔を向ける。
「タイムマシンは完成したぞ」博士は白い顎ヒゲをなぜながら、いぶかし気な表情。
「なんじゃ、やり残したこととは」
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