オープニング

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 シン・・・水を打ったかのように辺りは静かだった。俺の手元から放たれる魔法光の明かりが狭い石造りの通路をユラユラと照らし出す。これが外界から隔離されたこの場の、ただ一つの光源だった。 「これがラストだ」 そう言って俺は最後のカンパンのかけらを口にほうり込んだ。 「つまり・・・」 俺の脇で石の壁に持たれかかりながら、座っている青年が静かに呟く。黒髪にカーラーを巻き、右目にアイパッチをしたニヒルな感じの青年だ。服装はどことなくだれていて疲労の後がうかがえる。こいつの名はキルフォード。俺の相棒だ。 「俺たちの持ってる食料が完全に尽きたってことか・・・」 認めたくなかったがそれは事実だ。俺たちは罠のはりめぐされた遺跡の中で道に迷ってしまった。そして最後の食料はたった今俺の腹におさまった。 「だから俺は言ったんだ最初の罠にかかった時点で引き返すべきだった。それなのに・・・」 「泣き言は聞きたくないね」 キルフォードが一人ごちる前に俺はきっぱり言い放つ。 「んなこと言ったってよ。こんな危険な遺跡で道に迷ったうえ、最後の食料も尽きちまったし。んな状況になれば誰だってグチりたくなるぜ」 かまわず続けるキルフォード。俺はガッツポーズをとりながら。 「いいかキルフォード。本当に大切なことはだな目の前の困難に目を背けずに、事柄を直視して適切な対処をとることだ」 と、熱く力説する。
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