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遥か昔より大きく種族が二分化された異世界セティスでは、白い翼を持つ【ニールス】と茶色の翼の【オルクス】。この二種族が対立していた。
時はセティス暦千五百年の中頃。
天使が持つ能力の殆どを占めていたのは主に水、風、火、土の四属性。そしてもうひとつ、決して触れてはならない能力があった。
一人の少年。彼も、この世界の全てを知っている訳ではない。――がしかし、この世界が間違っている事くらいは理に解していた。
辺りを森に囲まれた、重厚な白亜の城。
温かな灯火だけが、等間隔に石造りの地下の通路を照らす。
「――っ、はぁ……はぁ……」
一定のリズムで漏れる息は、壁に反響し溶け入る様に消えてゆく。
無事この場所から戻れたなら、今度こそ彼は彼女に言うだろう。
あの時伝えられなかった想いを――。
「くっ……」
押さえた右腕の傷から痛みを伴い溢れ出る血が、時間の無い事を示していた。
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