prologue

4/5
前へ
/435ページ
次へ
   ――  ――――  遥か昔より大きく種族が二分化された異世界セティスでは、白い翼を持つ【ニールス】と茶色の翼の【オルクス】。この二種族が対立していた。  時はセティス暦千五百年の中頃。  天使が持つ能力の殆どを占めていたのは主に水、風、火、土の四属性。そしてもうひとつ、決して触れてはならない能力があった。  一人の少年。彼も、この世界の全てを知っている訳ではない。――がしかし、この世界が間違っている事くらいは理に解していた。  辺りを森に囲まれた、重厚な白亜の城。  温かな灯火だけが、等間隔に石造りの地下の通路を照らす。 「――っ、はぁ……はぁ……」  一定のリズムで漏れる息は、壁に反響し溶け入る様に消えてゆく。  無事この場所から戻れたなら、今度こそ彼は彼女に言うだろう。  あの時伝えられなかった想いを――。 「くっ……」  押さえた右腕の傷から痛みを伴い溢れ出る血が、時間の無い事を示していた。
/435ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2773人が本棚に入れています
本棚に追加