‡1章‡

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アステリア大陸 【フィーゼル王国】 アステリア大陸の内陸部に位置するこの国は、自然に囲まれており鉱山も多数存在している。 多くの人は鉱物などの資源を加工し、それを他国へ売り生計をたてている。 王族が暮らす城の城壁は鉱物を混ぜ合わせた特別なもので作られており、太陽の光を受けると青く輝くと言われている。 人々はその城を"クリスタル・パレス"と呼んでいる。 「クレア様!どちらにおられますか!クレア様!!」 メイド服に身を包んだ、小柄でショートヘアの女性が叫びながら走り回っている。 「まったく、クレア様は一体どこに…」 「あれ?フィーネ、そんなに走り回ってどうしたの?」 フィーネが振り返ると、紺色の乗馬服に長い髪を高いところで結い上げた、とても不思議そうな顔をしたクレアが立っていた。 「クレア様!お探ししていたのですよ。訓練場へいらしていたのですね。いくら本日は調子が良いからといっても、ご無理をなさってはいけません」 慌てたように駆け寄ってきたフィーネを見て、クレアは少し呆れ顔になった。 「大げさよ。しばらくミシェル(愛馬)と会えないから、お別れ言ってきたのよ。フィーネが呼びに来てくれたという事は、染色の準備が出来たのね?」 「左様でございます。準備が出来てからしばらくしてもお戻りにならないので心配いたしましたが、お元気そうで何よりです。さあ、お部屋へ参りましょう。みなあなた様をお待ちしております」 そう言って、クレアの後ろについた。 「そう、みんなをあまり待たせていると悪いわね。戻りましょう」 この季節、クリスタル・パレスには様々な花が咲き乱れている。 クレアはフィーネがすぐ後ろにいるのを感じながら、回廊横に咲く黄色の可愛らしい花を横目で見ながら歩いた。 .
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