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でも、明日になれば、山を降りられる……そうさ、明日になれば……。
そう自分に言い聞かせながら、僕は風呂に身体を沈めた。雨はまだ降っているらしく、ザァァァッという雨音が浴室の中にまで聞こえて来た。
風呂から上がると、脱衣場に浴衣が置かれていた。その浴衣の上に、“服はたぶん明日の朝には乾くかと思うので、今晩はこちらの浴衣に着替えてください 楠木”という内容の、きっちりと整った文字が書かれた紙が置いてあった。僕はここまで親切にしてくれる楠木さんに感謝しながら、畳んであった浴衣を広げた。
浴衣は、黒っぽい色をしていた。薄地で風通しが良い。浴衣を着て帯を締めると、僕は浴室を出た。
浴室は、この建物の1階の、2階へと続く階段の側にある。浴室から出て左側は廊下の突き当たりで、そこには小さな窓がある。僕は右側に曲がり、そこを直進し、途中にある「娯楽室」に入った。
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