第1章 1日目・夜

12/15
前へ
/34ページ
次へ
「誰だね、こんなことをやったのは!?いたずらにも程が過ぎる!」 泉谷さんが、潰れたタイヤを見ながらそう叫んだ。 「さあ……。今、ここにいない人物……ですね」 立ち上がりながら、そう楠木さんが答える。今ここにいないのは御手洗さん、神宮寺さん、それに美佐江さん……。普通に考えればそうだが……。 「一旦、部屋に戻りましょう。雨に濡れて風邪でも引いたらたまりませんからね」 楠木さんがそう言うと、仕方なそうに皆は頷いて、中に入った。雨は、止みそうになかった……。 玄関のドアを開け、中に入る。そしてそのまま、廊下の突き当たりにある食堂の中に入った。 時刻は、午後9時35分だった。泉谷さんは、「3人を呼びに行く」と言って、食堂を出ていった。それを見た楠木さんは、「……食事持ってきます。冷めちまったと思うんで、温めて来ます」と言って、部屋を出ていった。 嫌な空気が、食堂に漂っている。皆、黙ったままだった。ザァァァッという雨の音と、時折聞こえてくる雷の音だけが、食堂の中に響いている。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加