序章

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まったく、どれだけツイてないんだ……。僕はそう思いながら、木々が生い茂る森の中を、さ迷い歩いていた。ふと上空に目をやると、星ひとつない夜空からは大粒の雨が降っていて、時折稲光が光るのが見える。風もだんたん強くなってきて、その風が強くなるに従って雨脚も強くなっている気がする。 僕は、そんな暗い森の中を歩きながら、なんでこんなことになってしまったのかを、思い出した……。 そう、あれはつい数十分前の事だった。僕が運転していた、免許を取った記念に父から譲り受けたボロい白の軽自動車が、近くにある山道で突然パンクしてしまったのである。――さらに運の悪い事に雨まで降りだす始末。その雨も時間が経つごとにどんどん強くなっていって、しまいには大嵐となってしまった。 麓の街までは車だと30分ぐらいだ。歩いて行けない距離でもないな――思い返せば、そう考えなければ今頃僕はこんなことにはなっていなかったと思う。ここにいても仕方ない、と僕は考えて、麓の街まで助けを呼びに行こうと思ったのである。
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