殺人の館

序章

……そう思って歩いていたのだが、途中で不運にも崖の下に転落してしまったのである。崖の高さが大して高くなかったのだけは、運が良かったと言ってもいいだろうが、おかげで足は挫くしそこらじゅう怪我はするしでもう僕の身体はボロボロだ。

そんな事情があって、僕は森の中をさ迷い歩いていた。雨はますますその強さを増し、時折雷鳴が轟く。どこに行くあてもなく、僕はとぼとぼと歩く。

――と、そなとき、目の前に建物が見えた。――まるで、西洋の城を、そのまま小さくしたような外見の洋館だった。洋館にはいくつか窓があって、その窓からは灯りがぼんやりと漏れている。

助かった。僕はそう思って、歩くスピードを若干上げた。

洋館の玄関は、木でできていた。そんな玄関の前で僕は、「すみません、誰かいませんか！？」と大声で言った。

暫くして、ドアの向こう側からバタバタと足音が聞こえてくると、ドアがギィィィッと音を立てて開いた。