第1章 1日目・夜

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僕が、ゆっくりと目を開けると、目の前に赤い天井が見えた。 「おっ、気付いたみてえだな」 そんな声がして、僕はゆっくりと目線を右に動かした。そこには、Tシャツにジーパンといった服装をした、若い男性が立っていた。 僕は、何とか身体を起こそうとした。が、身体のあちこちがずきずきと痛んで、またベッドに横たわってしまった。 「無理しない方がいい。君は、あちこちに怪我をしていたからね」 男性はそう言うと、笑ってみせた。 「あの……、ありがとうございました、助けていただいて……」 僕はなんとかそうお礼を言った。 「ははは、いいってお礼なんて。じゃあ俺は、皆を呼んでくるから……事情はその時話してもらうよ」 男はそう言うと、ドアを開けて部屋から出ていった。 ザァァァ、という雨の音と、どこからか聞こえてくるカチ、カチという時計の針の音だけが室内に響いている。
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