第1章 1日目・夜

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暫くすると、ドアが再び開いた。入って来たのは先ほどの男性である。その後ろから、どやどやと大勢の人が――数えてみたら合計8人の男女が、室内に入って来た。 「やぁ、君が噂の青年かい?」 そう言ったのは、最初に入って来た男性の、すぐ後ろにいた老人だった。その老人は、いかにも「好好爺」といった感じで、白髭を生やし、老眼鏡を掛けている。服装はここにいる他の7人とは違って和服だ。 「はい……。野瀬隆太(ノセ リュウタ)といいます」 僕はとりあえずそう自己紹介した。 「ほぅ、野瀬君と言うのか。儂は泉谷幸三(イズミタニ コウゾウ)という、売れない小説家だ。――ところで君は、なんであんな時間に、こんな山奥を彷徨いていたのかね?」 僕は仕方なく、詳しく僕が遭遇したことを話した。――車のタイヤがパンクしたこと、雨に降られたこと、山道で迷子になったこと……。
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