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「ほう、そんなことがあったのか……。あ、自己紹介が遅れてしまったね。俺は楠木洋介(クスノキ ヨウスケ)だ。よろしくな」
今まで僕の面倒を看てくれていた彼が、そう自己紹介をした。
「ねぇ、この人どうするの? まさかここに置いておくわけ?」
そう言ったのは、明らかに不機嫌そうな顔をしているが、綺麗な女性だった。外見を見る限りでは、あまり僕と歳は離れてないように見える。
「まあ、仕方ないだろう美佐江ちゃん。この怪我でこの雨の中を歩いて帰れって言うのは酷いからな。天気が良くなったら、俺の車で麓の病院まで送って行くから、それまでいいだろ?」
次ぐ次ぐ僕は、この楠木さんの優しさに心から感謝した。
「……まぁ仕方ない、か……」
そう楠木さんが美佐江と呼んだ女性は言うと、ドアを開けて外に出ていった。どうもあの人は苦手なタイプだな、と僕は思った。
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