螺旋階段

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そこに気づいた時、自分の手を見た。 灯りになるものは持っていない。 周囲は、霧と闇が広がるばかりで、灯りなど見当たらない。 道しるべになるものも、ない。 だが、自分の体と数歩分ある階段は、見える。 歩いているとぐるぐるしているから、螺旋階段だということも、分かる。 一体、なぜ…? よくよく目を凝らすと、手がぼんやりと淡く光っていることに気づいた。 そうか。自分は、光っているのか。 気づいた瞬間、さぁっと霧が晴れ、闇も消え失せた。 ………そして、解った。夢を見ていたことに。 あの霧と闇は、自分の不安。螺旋階段は、今の迷っている自分だということに。 夢から醒めて。 自分を自覚し、何を迷っていたかも分かり…そして、決めた。 停滞していた自分を払拭するように、決断した。 「…昨日、午後8時頃、某所のマンション一室で、夫婦の無理心中と見られる遺体が発見されました。夫が妻に刺され、死亡し、その後妻が首を吊った模様です…。」
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