白無垢・留め袖

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「誰か。誰か来て!!」 金切り声をあげる式場の人。 控え室を訪れて、顔色が真っ青になった。 花嫁と双子の姉妹が倒れているからだ。 すぐに駆けつけた他のスタッフ達の介抱で、花嫁はすぐに気づいた。 だが。 もう片方は、気づかない。式の時間も迫っている。仕方なく、花嫁だけを行かせて、黒留め袖の彼女は、控え室に休ませたままにしておいた。 滞りなく式が終わり、控え室に戻ってきた花嫁。双子の姉妹の姿はなく、黒留め袖だけが残されていた。 あまりに不自然だったので、式場のスタッフは探し回る。その間、1人になった花嫁はクスクス…と笑っていた。 「もう、逃げきれたかしら?」 黒留め袖にしたのは、その印象を強くするため。顔よりも、服の印象を強くするために。 今、式をあげてきた花嫁は、先ほどまで黒留め袖を着ていた方。2人っきりになった時、衣装を変えた。 花嫁になるはずだった方は、他に恋人がいて、彼の元へ向かうために、今日この日に決行した。 花婿となる人は、見合いの相手で、姉妹の区別もつかない男だった。 「さて。私も逃げようかな。」 呟くと、白無垢を脱ぎ、私服に着替えて式場を後にした。 何をするにも一緒の双子は、もちろん、駆け落ちをするのも一緒だった。
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