絵本の森

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「だ…だいじょぶだもん。まーちゃんひとりでおうちかえれるもん。」 一人言を呟きながら、幼児は歩いて行く。仲のいい友達同士で遊び、かくれんぼをしていた。 …忘れ去られて、帰られたことに気づいたのは、夕暮れが迫ってきたからだった。 「もうかえろうよ。」 そう言っても誰も返事しない。名前を呼びかけても、返事がない。 置いてきぼりにされた、という事実はすぐに認められた。 ちょっと年上の子達もいたため、親にはこの森で遊ぶとは言っていない。 この森は、お化けが出るのだ、と言い聞かされてきた。 帰って来られなくなるんだよ、と。その事を今さらながらに思い出した。 歩きさ迷ううちに、ぽっかりと空間が広がる。歩いてきた森と違う森だ、とすぐに気づいた。…木々の幹に、絵本が立てかけてあるからだ。 知っている絵本があったので、その1つを開いてみた。自分が家に帰る途中だということを忘れて、夢中で読み耽ていく…。
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