鏡の欠片

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ブツッ。 この突き刺す音が何とも言えずに私は、酔いしれた。 ゴク…ン。 今夜の味は最高だ。甘く…香り立つ匂いに、少しばかりの酸味が、舌に広がるこの感覚がいい。 若い男の首筋に手を当て、更に飲もうとした瞬間。…自分の指に、ケガの跡を見つけた。 すでに出血は止まり、ケガの跡も、もう消えかけている。1分もあれば、この程度のケガなど、跡形もなく消え失せるが、それでも、自分の血を見るのは、ゴメンだった。 ………血は、やはり人間の…それも、私好みの若い男の血が美味だわ。 吸血鬼一族の中でも、特に美少女と表現される私に似合う、ね。 牙を通して伝わってくる甘い血の味を楽しみながら、私はそんなことを考えていた。
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