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今日も私は、1人彼の寝顔を見ていた。
けれど、残念ながら私だけが見られるわけじゃない。
昼間だというのに彼の部屋の住人がいた。
私は知っていた。
彼がもうすぐ永遠に眠ることを。その寝顔の下には、毛布がある。
もう、匂いを嗅ぐことなどないことも…知っていた。
「…もう充分に生きたわね。本当は、もっとずっと生きていてもらいたかったけれど。ありがとう。ジュン。」
住人の声に合わせるように彼は、一声…ワン…と鳴いた。
私は、窓の外…電線に止まって彼の最期を見守ってから、羽ばたいた。
カアッカアッと私は、彼のために鳴く。
部屋の住人が仕事で出かけている間。自分の匂いが染み付いた毛布の上に体を丸めて眠っていた彼。
もう彼には、二度と会えない…。
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