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動物園
雨の日の動物園は世界の終りと似ている。
人影は疎ら。
僕は世界の真ん中にいて、濡れた土と獣の匂いを上手に嗅ぎ分けてた。
灰色の中歩き回る湿ったライオンの足跡は血腥く、脱毛症の兎は酷く陰気。
君は難聴の猿を指差して、僕の知らない、何か素敵な言葉を囁いて、水の気配が少し濃く成った。
傘と傘の間で繋いだ手はべったり濡れ、体温で温まって気持ち悪かったけど、手を離すのは怖いから、生温い手をしっかり握ってた。
隣りにいるのに、君の声も君の顔も雨にぼやけて少しも届かないから、僕は灰色の中でひとりぼっちに成る。
灰色。隠れた動物。雨の日。生温い手。
これが世界の終りだとしたら、なんてさびしい光景なんだろう。
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