4恋に恋して

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愛してるの言葉を口にするには、とても勇気がいるの。 その一言で、全てが終わるのを知っているから。  大人になればなるほど、複雑に絡み合っていく交友関係の構図。 私の矢印は、とんでもない男へと向かって放たれている。 会社の上司で、妻子持ち。 別に不倫なんて世間じゃ普通だろう。  でも、どんな普通の恋愛だって、一方通行の思いは苦しい。 何年も、ずっと好きで、やっと結ばれた時は幸せだった。 だけど、彼はすぐに家族の元へと帰ってしまう。 今の嵐みたいに腕枕なんてしてくれない。 愛の営みの後は、まるで私の匂いを消すかのようにすぐさまシャワーを浴びて、帰ってしまう。 何度もホテルの部屋でそんな彼の背中を見送った。 まだ、私の体は火照っているのに、彼には届かない思い。  やばっ、あんなに激しい運動をしたのにまだアルコールが体内に残ってるのかな? 目頭が熱くなってきた。 思い出すだけで、泣きたくなるような恋なんて、しない方が楽なのに……。 気持ち良さそうに眠っている嵐を横目に、私はこぼれかけの涙を自分の指で拭った。 泣くもんか。 こんな所で泣くくらいなら、最初から恋なんてしなければよかったんだ。 だから、泣かない。 絶対に泣かないんだ。 言い聞かせるように、強く強く心に思い、私は嵐の腕枕の中で無理矢理に眠りについた。 レム睡眠くらいだったのだろうか? フワフワと夢と現実の狭間を気持ちよくさまよっていると、携帯が奏でる音楽によって、阻止されてしまった。
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