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嵐の答えに再び呆れた。
彼氏がいるのに、他の男持ち帰ったり、Hしたりするのは普通なのか?
普通はしないよ。
どう考えても、彼氏いないから、って結論になるんだけどなぁ。
「嵐は、いないの?」
本来、簡単に寝る相手にこんな質問はしないけれど、彼の場合はわからない。
「いないよ、別に欲しいとも思わないんだよね。
なんかさ、彼女とかよく意味わかんねーんだよ。
第一好きって感情がわかんね」
………。
えっと、、、、
「恋、したことないの?」
「多分、ある」
「じゃあ、好きって感情はわかるでしょ?」
「だからよくわかんねーんだってば」
なぜ?
恋した経験があるのに、なんで好きって感情がわかんないんだろうか?
私には、嵐の方がよくわかんないよ。
「……好きになるってさ、凄く体力消耗するんだよ。
もうね、ギュッと胸の奥から痛みがこみ上げてきて、辛くて悲しくて、だけど止まらない…。そんな感じじゃない?」
なぜに私は、「好き」の説明をしてるんだろうか。
しかも初対面の嵐に。
私の言葉に耳を傾けていた嵐の表情は真剣で、その瞳は何だか好奇心に満ちているようだった。
やっぱり、恋自体、経験ないんじゃないだろうか?
そう思うくらい、純粋で、無邪気な瞳だったから。
「里緒は、そんな風に誰かを好きになったことがあるんだ?」
「………」
ストレート過ぎる質問に、私は答えられなかった。
何だかわからないけれど、嵐の瞳に見つめられると、不倫してることが汚れているようで、答えに詰まった。
「里緒?」
「……そうだよ」
「オレもそんな風に苦しくなるような“好き”を経験できるかな?」
ベッドに腰掛けながら、両手を背中で大きく組んで天井を見上げている嵐は、まるで恋に恋してる男のように見えた。
23歳の頃、すでに今の不倫をしていた私とは違って、まだまだ純粋な嵐がたまらなくうらやましい。
何にも染まっていない、汚れを知らない無邪気さが、私を苛々させる。
汚してしまいたい。
そいういう衝動にかられた。
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