5好きの定義

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「やっぱ心が痛くなる恋しなきゃ、だよな」 うれしそうに。 昨日得た知識を喋るオレに、瞬は眠たそうに目をこすりながら耳を傾けている。 「何それ?」 「だぁから!苦しくなるくらい、誰かを好きになりたいって話」 「…恋したいって意味?」 「そう!」 「オレはねー、眠いの!嵐のくだらない話に付き合う余裕なし」 寂しいことを言う親友を無理矢理起こして、オレは喋り続けた。 それくらい、昨夜の里緒との出会いは有意義で、意味があったんだ。 今までの女とは違い、オレをCRASHの嵐としてじゃなく、ただ一人の男嵐と扱ってくれた。 それがうれしくて、だけど少し悔しくて、こそばい感じがしたんだ。 そこそこ名前も顔も売れていると感じてたんだけど、まだまだだな……。 「んで、お前はどうしたいんだよ?」 「へ?」 「その女に恋でもしたわけ?」 「恋?」 「違うのかよ?」 「…」 恋は、心が苦しくなるような感じなんだよな、確か。 里緒を思い出すと苦しいってより、ワクワクするんだよ。だから、恋じゃない。 「で、次は約束したの?」 瞬のこの発言で、オレはどでかい忘れ物を思い出した。 「聞いてねぇ」 電話番号どころかメルアドすら聞いてねぇよ。 何してんだ、オレ! あークソッ! もう里緒に会えない? それはヤダ! また、話がしたい。 もっと彼女の事を知りたい。 「家知ってんなら行けばいいじゃん」 「そっか!」 頭をかかえてうなだれていたオレに、瞬の助言はまるで神の声だった。 大きく頷いて、早速準備をした。 「今から行って来る!」 「はいよ」 瞬は再びベッドに戻り、夢の世界に入ろうとしながら、言葉だけでオレを見送った。 オレも早く、一秒でも早くアイドルという現実を忘れさせてくれる里緒の元へと急いだ。 数時間前歩いた道のりを、忙しい気分で小走りしながら到着した場所で、荒い呼吸を落ち着かせるために肩で息をしながらチャイムを鳴らす。
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