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週末の夜は嫌い。
私の男じゃなく、家族のパパになってしまう部長が憎い。
ね?
どんな顔して、家族と過ごしているの?
考えたくないのに、毎週想像してしまう。
だから、私はお酒に逃げた。
一人で飲んでいても、寂しさも虚しさもいっこうに埋まらない。
携帯のアドレスを開くと、ア行ですぐに手が止まった。
今、仕事してるのかな?
そんな疑問を抱えつつも、電話をしてみた。
コール数回で、元気な彼の声が耳に届く。
『もっしー、里緒から電話ってめずらしいね♪』
にぎやかな電話の向こう側。
そして楽しそうな嵐の声。
「んー、一人で淋しかったんだけど、嵐なんか急がしそうだからいいや、またね」
別に、彼じゃなくてもいい。
『え?ちょ待って』
あわてる彼をよそに、私は電話を切って再びアドレスを開く。
不倫を始めて5年。
淋しい時は他の男で紛らわす。
だから、アドレスにはたくさんの名前があった。
寂しさを紛らわすんだから、誰でもいいはずなのに、手が動かない。
思ったより、私の心に嵐は進入していた事に初めて気がついた。
出会ってから、まだそんなに時間は流れていない。
でも、彼の笑顔や、真っ直ぐさが私にはまぶしかった。
ただ、まぶしすぎて、目がくらんでしまっているだけだよね?
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