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「里緒ってさ、、」
なんだか歯切れ悪そうに、そして、ちょっと不機嫌を表した嵐の声に、私は耳を傾ける。
「何?」
腕枕をしたまま、私を見つめる嵐。
「……最中に、どっか遠くを見つめるの癖?」
え?
「そんな目、してる?」
「してる。
超しらけそうになるもん、てか一瞬萎える」
「……ごめん、今度があるなら気を付けるよ」
私と嵐の関係に、確かな約束なんてない。
だから、今度なんてあるかわからない。
「別にいいよ、無意識なら仕方ねぇし。
それより、なんだよ今度があるならって、オレともう会いたくないって意味?」
………。
前から思っていた。
嵐って、直球ストレートど真ん中だよね。
普通、言葉に含まれた意味をくみ取って、わざわざ聞いたりしないよ。
「まさか!
嵐がイヤじゃなければ、また遊んで下さい」
その返事が気に入ったのか、満面の笑みでうなづく嵐に、私までつられて微笑んでしまった。
なんだか心が温かい。
久しぶりだね、こんな気持ち。
「じゃあ、明日も来るね♪」
え?
「いきなり?」
「予定ある?」
「ない」
「じゃあいいじゃん、オレちょっと仕事あるから遅くなるけどメールする」
「…うん」
すっごい展開の読めない男の子です。
だけど、すんなりと心に入ってくる直球な言葉は、うれしくて。
明日を約束できたことがうれしくて。
私の顔は緩んでしまう。
誰かと未来を約束することが、こんなに幸せだなんて、もう忘れていたよ。
「じゃあ、次の約束もしたことだし、寝るべ?」
「そうだね」
激しく消耗した体力と、明日への安心感もあって、私は久しぶりにぐっすりと眠った。
嵐が隣にいる。そして明日も来てくれる。
私は一人で過ごさなくていい。
それは、嵐だからできたことだった。
だけど、否定したい私は無理矢理に言い聞かす。
‘嵐じゃなくても、隣に誰かがいてくれるだけでいいんだ’と。
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