2テイクアウト

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その笑顔、反則です。 もう、アイドル顔負けのキラキラオーラ。 世の中には、こんな男もいるもんなんだねぇ。 「大丈夫らよ?歩けるから」 どうやら、かなり酔ってるらしい。 ロレツが回らない。 「大丈夫じゃねぇじゃん」 私の腕をギュッと捕まえて、彼は心配そうにのぞき込んできた。 「うわ、男前のアップだー」 なんてはしゃぎだしてしまう私に、少し呆れたのか、彼は腕を放してくれた。 「女の子がそんなになるまで飲んじゃダメでしょ?」 女の子? 「あははー、二十歳過ぎた女捕まえて女の子なんてありえなぁい」 ケラケラと笑いながら、私はその男前の手を握った。  途端に、後ろから女の子のキャっという小さな悲鳴にも似た声が聞こえる。 「何あれ? 男前くんの女?」 しかも複数いるんですけどぉ? 「ちげーよ」 少しだるそうに、そして繋いだ私の手をほどこうとする男に、私は極上の笑顔を見せた。 「ね、どうせ暇なんでしょ? 私に拉致られてみない?」 こんな男前、滅多にいない! これは、神様が私にくれたチャンスなんだよ。 お持ち帰りしなきゃもったいない! 「は?」 かなり不機嫌そうに、そのキレイな顔を歪める彼を無視して、私はタクシー乗り場へと急いだ。  半ば無理矢理彼をタクシーに乗り込ませ、その隣に座りながら、運転手さんに行き先をつげた。 「あの、困るんすけど」 怒ってるのか、かなり低い声のトーンで喋り出す彼を無視て、私は微笑んだ。 「大丈夫大丈夫♪ いきなり襲ったりしないからさ」 何が大丈夫なのか、自分でもさっぱりわからない。 しかも、私はただの酔っぱらい。 酔った勢いって、恐いね。 何してるのか、自分でもよくわかっていない。 ただ、本能のままに 男前を拉致してしまった。
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