137人が本棚に入れています
本棚に追加
週末の夜、オレは雑誌の仕事をしていた。
「嵐くん、もっと睨んで!」
シャッターを切る音が何度も聞こえる。
オレは笑わせられたり、睨ませられたり、色々と表情を変える。
「そ、その顔!」
もう、自分がどんな顔してるか想像もつかねぇ。
でも、早く終わりたかった。
里緒は平日は仕事だからと会ってくれないけれど、週末は絶対に会ってくれるんだ。
ここ数ヶ月で覚えた。
休みの前になると、里緒は「寂しい」とメールをくれる。
その寂しいは、オレに会いたいって意味?
わからないけれど、里緒に会いに行く。
そして、彼女の体をオレで埋め尽くす。
「嵐さ、最近女でもできた?」
撮影の合間、メンバーの流星が興味もなさそうに聞いてきた。
興味ねーなら聞くなよっっ。
と思いつつも、素直に頷くオレ。
「うん」
「別にいいけどさ、写真撮られるなよ?
お前、結構そういうの気にしてなさそうだから」
「別にいいじゃん、写真撮られたって。
悪いことしてるわけじゃねーし」
ただ、普通に好きな女に会って、抱いて、23歳の男なら誰だってしてることだろ?
「……お前がよくても、周りにいっぱい迷惑かかるだろ。
それに、その女も傷つくよ?」
「里緒が傷つく?」
「お前のファンに限ったわけじゃねぇけど、過激な女いっぱいいるじゃん。
それに、今までお前が遊んで来た女だって、何するかわかんねーだろ」
確かに、女って恐い。
色々な修羅場を見てきた。
ダブルブッキングをした事があったけど、これでもか?ってなくらいに罵りあっていた。
それを見て、オレは一気に二人に冷めたんだ。
里緒に、そんな思いはさせたくない。
「気を付けるよ」
オレが気を付けることで、里緒が傷つかないなら、できるよ。
「んじゃ、いいや」
ニッコリとカメラに向けるかわいい笑顔で流星は撮影に戻った。
そして、さっき見せた笑顔と同じ笑顔を今度はカメラに向けている。
そんなアイドルな流星に感心しつつも、オレはスタジオを後にした。
最初のコメントを投稿しよう!