2テイクアウト

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ひとしきり、彼が笑い終わるのを待ってから、もう一度私は謝った。 「ごめんなさいでした」 すると、笑い過ぎで少し涙目になった彼はニッコリと妖しい笑顔をくれた。 「確か、いきなり襲ったりしない。とか言ってなかった?」 うーん、言ったかもしれない。 てか、記憶がございません。 「覚えて、ないです」 彼はうれしそうにニコニコしながら言葉を続ける。 「じゃあさ、拉致られてみない?ってオレを誘ったのは?」 「……覚えてない、けど、そうなんだろうね」 ああ、どうして私は今、こんなに情けないんだろうか? もう、酒なんか飲まない! この前だって、何か気がついたら玄関で裸で寝てたし、それ以外だって………。 数え上げればキリがない程の醜態をさらしてるんだよ。 「あはは、かなり酒癖悪ぃんだな、お前」 「………ほんとぉに、ごめんなさい! 酒癖悪いのは、わかってます。 迷惑かけちゃったのも反省してます。 タクシー代払うので、帰ってもらえませんか?」 もう、いやだ。 これ以上、知らない男に攻め続けられるのはごめんだ! 「ヤダ」 へ? 私は彼の言葉に思い切り顔を上げた。  すると、キレイに開かれた目にポカンとアホ面した自分が映っている。 「今、何とおっしゃいました?」 なぜに、敬語になる、私? 「だから、ヤダっつったの」 「………」 うん。 それは、帰りたくないって意味? え? えええええええ? 「ちょっっ、困る。 帰らないつもり? ってか、ココに泊まるの? それ、困る、一応女の一人暮らしだし……」 言葉を濁す私に、彼はニィっと唇の端を上げて微笑んだ。 「オレも困るって断ったのに、無理矢理連れて来たのは誰だよ? それに、いきなり襲ったりしないんだろ? じゃあ、大丈夫じゃん。 オレ、予定あったのにそれを潰したの、誰?」  何がどう大丈夫なんだよ? と叫びたい気持ちを抑え込んだ。 だって、予定があった彼を無理に連れてきたのはまぎれもなく自分だったから。
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