2テイクアウト

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「……じゃあ、ソファで寝てくれる?」 「ヤダ」 即答ですか、即答。 「なんでよ? まさか一緒のベッドに寝るわけいかないでしょ」 「じゃあオレがベッドでお前がソファでいいじゃん」 ………。 なぜに、私がソファなんでしょうか? いくら何でも酷くない? 「あのぉ、あなたは男性で私は女。 それにココ、私の部屋だよね? なのにどうして、私がソファなわけ?」 当たり前の私の質問に、彼は答えなかった。 変わりに、一言。 「名前、嵐っての」 いや、聞いてませんから。 答えになってませんから。 「……あなたねぇ、人の話をだな、聞いてますか?」 「んー、だから嵐って名前だってば」 「名前なんて何でもいいよ」 どうでもいいよ。  しっかし私も酔った勢いといえ、なんかけったいな生き物を拾ったものだよ。 「どうでもよくないっしょ? お前の名前は?」 「里緒、溝口里緒」 って、何を素直に自己紹介してるんだ、私? さっきからノリ突っ込みばっかりしてるよ。 「じゃあ里緒、お風呂入りたいんだけど」 ……… どこまで厚かましいんだ、この男前は。 いや、嵐だっけ? 「もうっっ、めんどくさいからシャワーでいい?」 「ん」 そう言うと、嵐は服を脱ぎだした。 「ちょっと待った! 脱衣所で脱ぎましょう、脱衣所で!」 何でココで脱ぐんだよ? 人の話も聞かずに、彼は一枚、また一枚と楽しそうに鼻歌を口ずさみながら浴室へと向かう。 「覗くなよ?」 浴室に入る寸前に、チラリと私を振り返り、にこりと、いたずらっぽい笑顔を向けた。  うわ、やっぱり男前だ。 かわいい。 「覗かないよ」 と言いつつも、顔が赤い。 ホントにキレイな顔してるよ、名前しか知らない男だけど。
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