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とりあえず、嵐が風呂に入ったのを音で確認してから、私は大きくため息をついた。
「どうしよう…」
酔った勢いで連れて帰って、どうするつもりだったんだろうか?
よく飲みに行く居酒屋なんかで、お気に入りの店員さんをお持ち帰りした経験は何度かあるけど、初対面は一度もない。
これから挨拶とかして、会話する?
………。
………。
無理があるよな。
なんか、風呂とか入ってるし、やばくない?
男と女、しかも、成人してるだろうし、やっぱヤッちゃうのかな?
ま、男前だったし、いいんだけど。
「里緒ーっっっ」
考えこんでた私の思考を遮る叫びが風呂場から聞こえる。
「……何?」
曇りガラスの向こうには、裸の嵐がいる。
そう思うと、自然と頬が熱くなる。
「一緒に入ろ」
「は?」
「早く!オレのぼせちゃうんすけど」
いや、待て。
のぼせる前に出てくればいいだけじゃない。
「ヤダ」
「いいから、早く!」
そう言いながら、彼は腰にタオルを巻いて、曇りガラスの扉を開いた。
途端に、中から蒸気が私を襲う。
クラクラになりそうな、なまぬるい湿気を含んだ空気。
そして、ほとんど全裸に近い男前。
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