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聖『もしもし……』
数回の呼び出し音の後に聖の声が聞こえる。なんだか少し疲れた声だ。
「あの、今日はごめんね…せっかくの婚約発表台無しになっちゃって…」
聖『いや…よかったよ』
「え?どう言う意味?」
聖『そのままの意味だ。早まったことしなくてよかった。あの男たちも、もう少し早く乗り込んできてくれればよかったのに…おかげでいらん恥をかいた。』
一体、聖は何を言ってるんだ?婚約発表が台無しになってよかったって…どういう事だよ…
聖の言っている言葉の意味が理解できなくて、私は何も言えずにいた。
聖『玲奈…俺と別れてくれ』
「え?何?なんで?」
聖『なんで…だと?俺に言わせる気か?ふざけるなよ。あんなに大勢の前で俺に恥かかせただけじゃ足りないか?俺はお前の事を全然分かってなかったみたいだな…まさか他にあんなに男がいるとはな…心底軽蔑するよ。正式な婚約の解消には代理人に任せるから』
「ちょっと待ってよ。いきなり何言ってるの?今日の事私が仕組んだとでも言いたいわけ?」
聖『ふん…お前ならそのくらいするかもな。もう、顔も見たくないし、電話されるのも迷惑だ。じゃぁな』
そう言って、電話は一方的に切られてしまった。
すぐにかけなおしたが、流れてくるのは着信拒否されたことを告げる無機質な声だけ…
その声が、先ほど聖に言われたことが事実なのだと告げていた………
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