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あぁ、久しぶりの血の味だ。
「がっ…!」
貴也が声を出しかけたから、口を塞ぐ。モゴモゴしているが、その抵抗も次第に弱くなる。
弱くなっていき、貴也の全ての力が抜けて机に伏せた。
同時に、俺は貴也からの吸血を止めた。
このまま吸血したら、死んでしまう。別に、俺は貴也に限らず人を殺したいわけではない。
あ、向かってくるハンターは別だけど。
吸血され気を失った人間は、体だけでなく心まで無防備になる。
この状態での命令は、絶対のものとして心に深く刻まれる。
「貴也、起きろ」
声に反応して、貴也の目が開く。でも、焦点はどこにも合っていない。
「貴也は、俺の駒だ。俺の指示・命令は絶対だ」
「命令は…ぜっ…たい…」
「もう一つ、この部屋から出ると、貴也は俺が吸血鬼であることを忘れて、俺の駒であることも忘れる。これまで通りの貴也でいろ」
「これ、まで…」
長文は刻まれるまで時間がかかる。まあ、仕方ない。
「今は吸血されて血が足りない状態だ。大人しく寝ろ。目覚めたら、さっき言った通りになる」
「目覚めたら…」
それ以上は聞き取れず、貴也は再び気を失ったように眠りについた。
「…ククク」
警戒に警戒を重ねた上での吸血。それこそ、吸血鬼的には「できて当たり前レベル」の吸血行為だが、達成感がある。笑いが止まらない。
「まずは一人…」
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