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シーフは顔を伏せ、
「似てるな…」
と呟いた。
「似てる…?誰にだ?」
「我が父に…だ」
シーフが顔を上げた。少し歯を見せている。どうやら笑っているようだ。
「どこが似ていると言うのだ?」
ガルフはシーフに聞いた。しかしシーフは、
「自分で考えろ」
と、言うと素早く動き、三人の兵士を一蹴した。
「なんだと…」
ガルフは驚いている。シーフは悠然と窓際に寄り、窓を開けると、
「裏切り者」
と言い、飛び降りた。
「何があったのですか!?」
マリアは執務室に入るなり、驚いて言った。散乱している本、うめき声をあげいる兵士。その時マリアは気が付いた。
「彼はどちらに?」
彼とは無論、シーフの事である。
「逃げたよ」
「逃げた?…まさか、殺そうとしたのですか!?」
マリアはガルフに詰め寄った。
「シバーツ家のためだ。分かってくれ」
ガルフはマリアの肩に手を置こうとしたが、マリアは手を払った。そして、
「失礼します!」
と言うと部屋を後にした。
「……」
ガルフは、さっきシーフに言われた事を思い出していた。
「裏切り者」
彼はそう言った。ガルフは、数年前にも誰かに言われた気がする、と思った。
日は傾きかけている。そんな中、七達は東門でシーフの帰りを待っていた。
「腹減った…」
七が腹を押さえつつ嘆いた。昼に集合と言っていたので、昼食はまだ取っていなかった。
「…遅いね」
六が五に言った。
「そうね…」
二人の会話は静かである。
(…仲良いんだよな?)
七は何となく思った。その時五があっ、と声を上げた。視線を移すと、シーフがこちらに歩いてくる。
「遅いですよ、おか…」
七がお頭と呼ぼうとした時、六がみぞおちを喰らわした。あたりに人が少ないとはいえ、街中である。
「待たせたな」
シーフは六に言った。七の存在は無視している。
「珍しいですね、時間に遅れるなんて」
「色々あってな」
その時五が気付いた。
「マリアさんは?」
「…家に帰った」
「「帰った?」」
双子が同時に言う。
「あぁ…」
シーフはそう言うと歩きだした。行くぞ、という合図らしい。
「少しは心配して下さいよ…」
七は涙目で言った。
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