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月に照らされた道を一人の男が走っている。服装は黒を基調としている服を着ている。昼間なら目立つその服も、闇に溶けているためあまり目立たない。
「今日は大したことなかったな」
男は自分の抱えている箱を見た。箱の中には壷が入っている。先ほど男が貴族の家から盗んだものである。言ってみれば泥棒である。
(まぁ、高いだろうな)
何せ金持ちの家にあった壷である。売り払えば言い値がつくかもしれない。
「七じゃないか」
その声に男、七は足を止めた。声のした方を見れば、大男が背中に大きな袋を持って立っていた。
「参か、そっちも済んだのか?」
参と呼ばれた大男はあぁ、と言い
「警備が甘かったからな」
と言った。
「そうか…」
頷きかけた七はうん、と首を傾げた。
「お前が頭に頼まれたのは、そんなにでかかったか?」
と聞いた。参は軽く顔を背けた。
「…参?」
「戻ったら教える」
参はそれだけを言うと、背中を向け走り出した。
城下町を抜け、東に行ったところに山がある。その中腹辺りある洞窟を、彼らは拠点にしていた。入り口には二人の女が見張りとして立っている。双子である五と六である。
「「お疲れさまです」」
二人は同時に言った。こういう事はよくあるので七と参は慣れている。
「おう」
「……」
七は返事をしたが、参は黙ったままでいる。そういえば会ったときから様子がおかしかった。その理由を聞こうとした時、中から一人の男が出てきた。それに気づいた五と六は敬礼をし、七と参はひざを折り頭を下げた。
「早かったな」
そういった男の声は若い。
「警備か薄かったので…」
「……」
七は応えたが、参は黙っている。
「どうした?」
若い男が声をかけた。参は軽く顔を背けたが、意を決したように、
「これを見て下さい」
と言い袋を開いた。中から出てきたのは髪の長い女だった。
「……」
若い男は何も言わずに、参の頭を殴った。
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