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洞窟を出るとすぐに、山の裏側に続く道がある。そこを進むとちょっとした広場に出る。
「まずは、コイツからだ」
シーフは自分のダガーを抜き、マリアに渡した。
「あの…扱い方が…」
「勘でやれ」
シーフはぶっきらぼうに言った。そして六を呼んだ。
「手加減してやれ」
「分かりました」
六はダガーを腰から抜いた。シーフの持っているダガーに比べ、剣身が短い。
「よろしくお願いします」
マリアはダガーを構えた。剣先は六に向いている。と、六が真っ直ぐに突っ込んで来た。
「やぁ!」
と、マリアはダガーを突き出したが、六は簡単に避けて逆に、マリアの首筋に刃を当てた。
「ここまでですね」
六はそう言うと、ダガーをしまった。
「…凄いですね」
マリアは驚きつつ言った。六は大したことはないと言ったように、
「これぐらい当たり前です」
と言った。
「さて、次だ」
シーフはそう言うと石を指差した。
「次のは簡単だ。これを持ち上げてもらう」
「これをですか…」
シーフの指差した先にある石は人の頭ぐらいはあるだろうか。マリアは意気込んで持ち上げようとしたが、少し浮かしたのが限界だった。
「その程度か?」
「無理ですよ、これ」
シーフは黙ったまま参に視線を送った。心得たとばかりに参は、マリアが持ち上げようとした石を片手で軽々と持ち上げた。
マリアはただ驚くばかりだった。
「いよいよ最後だな」
シーフが言った。あの後色々やったが、芳しい成果しか上げれなかった。
「最後は弓だ」
シーフが木を指差した。木には削って作った的がある。
「俺の出番だな」
そう言ったのは、マリアの参入を唯一嫌った七だ。七は弓を構えた。的までは歩いて二十歩の距離である。七が指を放した。矢が宙を飛び、的に刺さった。中心からやや左にずれている。
「こんなもんか」
七はマリアを見た。その顔はどこか勝ち誇っている。マリアは黙ったまま、弓を受け取ると構えた。弓は長弓ではなく短弓である。マリアは構えたまま微動だにしない。その時、強い風が吹いた。風がマリアの髪を巻き上げる。しかしマリアは意に介せず、矢を放った。矢は的の中心に刺さった。
「なっ…!」
七が言葉を失った。
「集中力はあるな」
シーフが言った。
「決まったようですね…」
壱は下がりかけた眼鏡を持ち上げつつ言った。
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