闇にイキルモノ

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洞窟を入るとすぐ下り坂になっており、そこを下ると空間が広がっている。普段は長机が置いてあるが、今はどけられ邪魔にならないようになっている。 「さて…」 椅子に座っている若い男がそう声に出し、斜め下方を見た。そこには参と呼ばれた大男が、身を縮ませ正座をしていた。 「さっきお前が持ってきた荷物は何だ?」 若い男が聞いた。その声はどこか殺気がこもっている。参は内心怯えながら、 「若い女です」 と答えた。 「そうだ…お前、掟を忘れたのか?」 「いえ、忘れていません」 「なら第二条言ってみろ」 「…人さらいはするなです」 「よろしい」 若い男が席を立った。 「なら分かるよな?」 腰からダガーを抜きつつ聞いた。 「いかなる理由があろうと破った者には…」 参の首筋にダガーの刃が当たる。 「…死を」 「シーフ様」 若い男、シーフが切ろうとした時、後ろから声が掛かった。シーフが振り向くと眼鏡をかけた男と、先ほどの若い女が立っていた。 「壱か…」 壱は頭を軽く下げ、 「目を覚まされたので、つれて参りました」 と言った。 「ご苦労」 シーフはダガーを腰に戻しつつ、女に歩み寄った。背はシーフの肩ぐらいである。 「俺の部下が迷惑をかけたな」 女は下を向いたまま、何も言わない。 (怯えているのか?) 無理もない、とシーフは思った。目が覚めたら洞窟、しかも見知らぬ男がいるのである。と、不意に女が顔を上げた。その顔を見てシーフは疑問に思った。怯えていないのである。それ所か、微かに喜色が伺える。シーフが内心首を傾げていると、突然女が抱きついてきた。 「なっ…!?」 その場にいた壱や参、それにシーフも言葉を失った。女はぽつりと、 「やっと逢えた」 とだけ言った。
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