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「秘具?」
シーフは五に聞いた。
「その昔、魔女イデアが数多の生贄を捧げ創ったものです」
「イデア…あの黒魔術のイデアか」
「そうです」
五が答えた。他の部下は黙っている。すると、シーフは軽く息を吐き、
「どうせそれだけの事だろ」
と言った。いわくつきの物なら、今まで何回も盗んでいる。しかし、そのどれもが迷信だった。魔女の秘具と言われている紅の珠玉も、似たようなものだろうとシーフは感じた。しかし五は首を振り、
「他の物などまだ優しい方です」
とだけ言った。
「どういう意味だ?」
シーフは視線を七に移した。
「誰かから聞いた話なんですけど…」
七は話し始めた。
「触れた者は憑かれると」
「はぁ?」
シーフは呆れた。憑かれると云われていた絵画を、少し前にシーフは触れたばかりてある。あれから何日か経ったが、変わった様子はない。
「呆れるのも最もだと思いますが、今回のは訳が違います」
そう言い出してきたのは参だ。
「何十年か前に、紅の珠玉に触れた貴人がいまして、触れた途端に狂ったように絶叫して、暴れ始めたんです」
参は一呼吸置く
「周りの人達が必死に押さえようとしましたが、鬼神の如くの怪力で辺り一帯を血に染めあげました」
「…そいつはどうなった?」
シーフが聞いた。
「最後は大量の血を吐いて死にました。それ以後紅の珠玉は恐れられ、今はアリマの地下深くに保管されているとの事です」
参はそう締めくくった。
「なる程な」
シーフは納得したようだった。
「あの…」
今まで話を聞いていたマリアが声を上げた。
「なんだ?」
「私の願い…受けていただけるのですか?」
恐る恐るシーフに聞いた。紅の珠玉は他のに比べると非常に危険な代物だ。断られても文句も言えない。しかし、シーフは何事も無かったような顔をして、
「さっき俺は受けると言ったが…?」
と言った。
「いいんですか!?」
「「お頭!?」」
マリアは喜びの、壱を除く他の部下は驚きの声を上げた。
「お頭!本当に盗るつもりですか!?」
声を張り上げのは七だ。洞窟内のため、必要以上に声が響く。七は必死な顔をしている。
「俺に不可能はない」
シーフはそれだけを言うと、壱の方を向き、
「全員に召集をかけろ」
と言った。
「この人数では無理ですか」
「当たり前だ。これだけで、王の輸送隊から盗もうなど無謀だ」
「召集には時間が掛かりますが?」
「構わん」
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