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秀吉は生前から自分の墓所を決めていた。
東山三十六峰の一つである京の阿弥陀ケ峰である。
農民から天下人まで成り上がった秀吉にとって、京という場所は特別であり、その京で『神』になろうとしたのである。
秀吉はある意味劣等感の塊の様な男であった。
その劣等感が秀吉の起爆剤になったと言っても過言ではない。
秀吉の生前に阿弥陀ケ峰の山麓に大仏殿が建てられ、それを拡張して秀吉の廟所にする事は秘かに決められていたのである。
この密葬についても秀吉の生前に五奉行にて決められていたものであり、三成と玄以は伏見城から阿弥陀ケ峰まで途中から籠を使い秀吉の遺骸を運んだ。
(天下人の葬儀がこの様な寂しいものとは…。殿下…お許し下され)
雨に打たれている三成の頬に雨粒とは明らかに違う一筋の涙が流れ落ちた。
(殿下…殿下との出会いからいつの間にかもう二十四年になり申した。思えばあの時………。)
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