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その声は、目の前で手足を拘束し馬乗りになっている同種族が鋭く尖った犬歯を向けたときに止まった。鋭く森に木霊した悲鳴は、すぐに途絶え、鳥の羽ばたいていく音と滴り落ちる液体の音、なめ回し、歯を立てて噛みちぎられる生々しい肉の音が鮮明に耳へと進入してくる。
食欲をかき立て、闘争心をめぐらせて血流を活発化させるその色、臭い。ニンゲンの血の臭いも嫌いではない。喉を噛みきったはずなのに、痙攣して手足が動いている。しきりに口を動かしている相手と同族であり、我らの仲間であるニンゲンに問うた。
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