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「飼い主。俺はお前のためにニンゲンを殺すんじゃない。ニンゲンの血を好いた老狼のためと神のためだ」
胸倉を掴んで顔をつきあわす。その下品な声が出ぬように十年前と同じように声帯を噛み千切ってやりたかった。
時間だ行け、苦し紛れに男はそう言った。立ち上がって男は戦場へと向かう。神に祈りを捧げると心底楽しそうな表情を見せた。
「殺してやる!」
軍を引き連れて相手と対峙する。熱風が押し寄せてその風に焼かれた葉が舞っていた。遠吠えのようにニンゲンの声で発した最初の言葉。
視界が点滅する。気持ちが安定してくる。自分の背後に神がいる。十年前に殺した奴ではなく、今度は神の言葉を代弁する。そうだ、これは神の声だ。聞こえるか老狼。神の声だ。この声帯は神のモノだ。手に入れた声は神の声だ。全ての感情を支配し、安定を保ち続ける神の声が聞こえるか老狼。
――将軍は高らかに遠吠えをして、
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