終章

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 スマホの通話を切ると、柚木は車の助手席に放り投げた。  そうして、炭酸水が入ったペットボトルに手を伸ばし、一息に飲む。 「やれやれ……」  ペットボトルをホルダーに置き、軽くため息を吐いた。 「千華ちゃん、頑張っているな……」  教え子の保護者に刺されたという事実は、思った以上に柚木に衝撃を与えていた。  襲われたのは千華子で、柚木は庇ったに過ぎないが、それでも考え込んでしまうには十分だった。  柚木としては、精一杯仕事をしているつもりだった。  所謂モンスターペアレントと言われる昨今の保護者達にも、誠実に対応しているつもりでいた。  それは、新見じゅえるの母親にも、同じだった。  確かに、じゅえるではなく妹の方の担任ではあったが、それでも、新見じゅえるの母親は、十分にモンスターペアレントだったのだ。
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