終章

28/40

4761人が本棚に入れています
本棚に追加
/1088ページ
 柚木は、譲る気はなかった。 「外聞が悪い」と言われるかもしれないが、「自分は悪くない」と言うことを、伝えていこうと思っていた。  もしかしたら、今の仕事を失うのかもしれない。  けれど、自分の心や誠実さを曲げてまで続ける意味はない、と静養している間に決めたのだ。  「教師だから」と言って、全てのことを飲み込むことも、耐えることもしなくて良いのだ。  嫌なものは嫌だと、理不尽なものは理不尽だと、声に出す。  新見じゅえるの母親は―今は、心神喪失になっていると言う。  もし千華子が刺されていたら、多分、それ以上彼女に責を追わせるようなことはしないだろう。  でも、だからこそ、なのだ。  自分のような人間が、声を出して言う。  保護者だからとか、教師だからとか関係なく。
/1088ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4761人が本棚に入れています
本棚に追加